の第一印象?
・・・馬鹿か、コイツ?
それ以外?
・・・そんなものある訳無いだろう!!





廊下を歩いていたら前からやけに小さいヤツが、前が見えないくらい高く積み上げた箱を抱えてよろよろ歩いてきた。
ぶつかると面倒だから避けようとすると、よろけているのかワザとなのか分からないがそいつは俺の方に向かってきた。
俺が右へ行けばそいつも右へ、左へ行けば左へ・・・それが数回続いていい加減面倒になった俺は、立ち止まってそいつに声を掛けた。

「おい、お前。」

「は、はい!!」

返ってきた声は予想以上に高い声で、一瞬女かと思ったがこんな小さい女がここにいるはずは無い。
仮にもザフト艦、しかも隊長が指揮する艦の中だ。
一瞬でもおかしな事を考えた自分に渇を入れる気で目の前の人間に声をかける。

「こんな大量の荷物を一度に運ぶヤツがあるか!人にぶつかったらどうする!」

「す、すみません・・・その、急に入り用になったんですが僕以外の者が出払ってしまって・・・すぐにどきますから!!」

「当たり前だ。」

そう言ってそいつが横へ移動した瞬間バランスを崩したのか、手にしていた箱を全て床にばら撒いた。

「・・・あ゛」

勿論側にいた俺が被害を被らない訳は無い。
頭からずり落ちてくる包帯をゆっくり手に取ると目の前にいるヤツに差し出す。

「・・・貴様、ワザとか?」

「そんな事ありません!ご、ごめんなさい!!」

「とっとと片付けろ!!」

「はい!」

普段の俺ならすぐにその場を立ち去るんだがこの時は妙にそいつが気になって、慌てて散らばった荷物を拾い集める姿をただ黙って眺めていた。










ようやく集め終わったそいつは再び荷物を両手で抱えると俺の方へ向き直った。

「ご迷惑おかけしました。」

「お前・・・医局の人間か?」

「はい。」

「・・・ふーん。」

「それでは急ぎますのでこれで・・・失礼致します。」

そう言うと、こいつはたった今集めたばかりの荷物を持ったまま俺に頭を下げようとした。

「馬鹿!荷物を持ったまま頭を下げるヤツが・・・」

慌てて荷物を押さえようとしたが、既にその中身はバラバラと俺に向かって落ちてきていて・・・避ける間もなかった。





「本当に、本当にすみません!」

丁寧な言葉とは裏腹に、やる事は3歳児以下。
それがコイツの第一印象。
もっと簡単に言えば・・・馬鹿だ。

「お前、馬鹿か?荷物を持ったまま頭を下げれば落ちてくる事くらい分かるだろう!」

「はい・・・本当にすみません。」

再び落ちた荷物を拾い集めている時、目ざとく俺の手の甲が切れているのに気付いたこいつに引き摺られて医局の中へ入る。
医局は病院のような消毒液の匂いに包まれていてあまり居心地のいいものではない。
とっとと帰ろうと扉へ向かった俺の手を、白衣を着たさっきのチビが掴んだ。

「・・・離せ。」

「消毒が終われば離します。」

「そんなもの必要ない!」

「小さな傷でも怪我です!」

「こんなものかすり傷だ!!ほっとけば直る!」

「バイ菌が入ったらどうするんですか!!」

さっきとはまるで別人のような強気な態度・・・その変貌に思わず口を噤んだ瞬間、手にチリリと言う痛みが走った。
少し切れただけと思っていた傷口は俺が思ったよりも深かったらしく、少し消毒液が・・・しみた。

「・・・はい、終わりです。」

「ふん・・・余計な事を・・・」

右手の甲にご丁寧に絆創膏まで貼ると、チビは救急箱を側の机に置いた。

「・・・もう行くぞ。」

「はい・・・
あー!!

扉を開けようとした瞬間に、全く・・・何だコイツは!?

「貴方のお名前・・・聞いてませんでした。」

「人に名を尋ねる時はまず自分から名乗るものだろう。」

振り返ってそう言うと、ポンと手を叩いて白衣に付けている名札を俺の方へ向けた。

「僕は、医局に勤務しています。」

「イザークだ、イザーク・ジュール。もう用は無いな。」

もう二度とここへ来る事も無いだろう。
俺がこんな怪我で医局へ来る事も無いし、それ以上の怪我をしてここで厄介になる事など到底ありえない。
そう思い今度こそ扉を開いて一歩出ようとしたその瞬間・・・

「イザークさん!!」

またか!?・・・今度は何だ!
そう怒鳴りつけようと振り向いた俺の目に飛び込んだのは・・・向日葵のような眩しい笑顔。

「イザークさんは僕の始めての患者さんです!また怪我したら来て下さいね!!」

「・・・っ誰が来るか!この馬鹿が!!」



その後、アイツがあのアスランの幼馴染だと言う事を知り、そして隊長の秘書も兼務していると言う驚くべき事実を知った。
模擬戦闘やシュミレーション、ミーティングなど隊長がいる場には必ずアイツも同席するようになって・・・その姿を見る事が増えた。
その都度、ちょっとしたアイツの仕草に目を奪われる・・・何てそんな馬鹿な事・・・・・・
俺に限ってあるはずなど無い!!断じてない!!!





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第一印象と言うタイトルで書いてみました(笑)イザークバージョンです(笑)
続くのかな?予定と言うか出来ればと言うか・・・できればザフトの皆様は書きたい!全員!!
あ、そうそうイザークはヒロインが男装している少女だと言う事にまだ気付いていません。
ヒロインの性別を知る順番としては・・・幼馴染のアスランは別格として、クルーゼ隊長→ラスティとミゲル→ディアッカ→ニコル→最後にイザークって所でしょうか。
とりあえずトップガンの4人が知るより早く隊長は知っているはず。そうしないと秘書として引き抜き出来ないからさ。
このイザーク話は「この馬鹿が!」とイザークに言わせたかった・・・と言うのでできた話です(笑)
私の書き始め、第一印象ってそんなちっぽけな物からなんですよ〜♪
結構好きです、こんな可愛い?イザーク。